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「泥流地帯」(三浦綾子著)

 先般、視察で旭川市にお伺いする。先進的な救急医療体制について。将来の合併、もしくは、さらなる広域行政を見据えて余裕のある体制整備。

 現地視察を終え、ホテルへ。私は、ホテル前で皆と別れ、慌ててタクシーを拾い、三浦綾子記念文学館へ飛ばしてもらう。ホテルから20分あまり走り目的地へ。

100727三浦綾子文学記念館全貌 代表作「氷点」の舞台の一つにもなった外国樹種見本林の入り口近くにある。思いのほか小さくて少々驚くも、三浦綾子らしいとすぐに納得。

100727見本林 角度を変えて。今度は、文学館側から見本林を見る。

100727室内 文学館内の様子。展示コーナーは撮影禁止。当然か。


 三浦綾子は、「氷点」から入る人が多いであろう。しかし、私はなぜか、「塩狩峠」を先に読む。衝撃を受ける。

 明治42年に実際に起きた事故。
 「列車。牽引車から外れてしまった客車が線路上を逆走する。止まらない。たまたま乗り合わせた鉄道職員が身を投げてその客車の下敷きになり、ようやく、停止する。乗客は全員助かるも、その鉄道職員は轢死してしまう。自己犠牲の精神」

 三浦綾子は、その実話を基に「塩狩峠」を書き上げる。

 私が、初めてこの作品を読んだのは中学2年の時でなかったか。まっすぐに受け止め激しく衝撃。もう少し後年であったならば、キリスト教臭を自然感じ取ってしまい、違う思いを持ったかもしれない。

 その後、いよいよ「氷点」。これは読まなければいけない。しかし、高校生くらいがちょうど良い。ここでは詳細は書かない。日本のみならず海外でもベストセラーになっているということを、今回、記念文学館へ行って、初めて知った。

 「泥流地帯」
 私は、この作品が一番強烈に印象に残っている。というか、昨年末も、何を思ったか、読み返す。

 大正15年、十勝岳噴火を題材にした小説。
 「強烈に印象に残っている」場面とは。

 十勝岳噴火で多くの犠牲者が出た。主人公耕作の家族も、多くの友人知人も。耕作は必死で家族の、友人知人の安否を確認している。

 そんな時、この小説でも、意地の悪いばあさんで登場している「シン」が甲高い声で言う。

 『「なあ、わしらカジカの沢のもんは、よっぽど心がけがいいんだね。畠も家も、みんな無事だったもんね」
 「そだこと言うな」
 低い声で、誰かが突く。
 「だって、そうだべさ。太陽さんはちゃんとみてござるもんね。心がけのいいもんは助かるよ・・・」

 (そうだろうか)非情なシンの言葉に、耕作を歩みをゆるめた。死んだ者が、生き残った者より罪が深かったといえるのだろうか。生き残った者が、シンのように傲慢な口をきていいものなのだろうか。
 耕作は、死んだ市三郎、キワ、拓一、良子の、一人ひとりの顔を順々に思い浮かべた。』

 初めて読んだときは、自然、涙が出てしようがなかった。昨年末に再読した際でも、胸が詰まる。単純にストーリーとしてだけでもない。

 上記引用に続く、次の文章を読んで、その言葉が、自分自身に突きつけられたような気がしたからだ。

 『キワにしても拓一にしても、そして良子にしても、みな親切な人間だった。残った自分が一番不親切なように思う』

 これが、いわゆる原罪というやつか。やはり、主題の根底に流れるものはキリスト教なのか。

 三浦綾子についてはこちらを見ていただくのがいいのかもしれない。ちなみに、記念文学館でもこのDVDが流れていた。



 余談だが・・・。

 大学くらいまで、私は、三浦綾子と曽野綾子とは同一人物だと思っていた。曽野綾子もクリスチャン、旦那は三浦朱門。

 曽野綾子がキリスト教を意識した作品を書くときは「三浦綾子」という本名で。それ以外は、曽野綾子という旧姓で書いているものだと思っていた。もちろん、全くの別人。

 直木賞作家の色川武大が、麻雀小説を書くときには、阿佐田哲也のペンネームを使っているように。ちなみに、この麻雀小説ペンネームは、徹夜麻雀が続き、『朝だ!徹夜だ!』と騒いでいたことが由来らしい。

 もう一つの余談。
 小説「氷点」がベストセラーとなり、映画やテレビドラマ化もされ、一躍流行語になる。ちょうどその頃始まった落語家たちの番組。立川談志が「氷点」を文字って「笑点」とつけ、今日に至っている。こっちは、ホントの話。
山野之義 * 一夜一冊 * 23:31 * comments(0) * trackbacks(0) * pookmark

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